鎖骨骨折の後遺障害|後遺障害・後遺症でお困りの方は弁護士法人心まで

鎖骨骨折の後遺障害

1 鎖骨骨折の後遺障害

⑴ 鎖骨の変形障害

交通事故により鎖骨が変形した場合の後遺障害等級,及び,労働能力喪失率表記載の労働能力喪失率は下表のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害の内容 労働能力喪失率表の数値
12級5号 鎖骨に著しい変形を残すもの 14/100

なお,「著しい変形」とは,裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のものであることを意味します。

⑵ 鎖骨の変形障害に関する労働能力喪失率の考え方

ア 問題の所在

鎖骨は,先天的に欠損している場合でも,後天的に全摘出してしまった場合でも,肩関節の可動域や日常生活における動作に大きな支障はないと言われています。

そのため,鎖骨に変形が残ったとしても,労働能力には影響がない,あるいは,労働能力に影響があるとしても,その程度は軽微なものに留まるとして争われることが少なくありません。

イ 鎖骨に変形が残ったこと自体によって労働能力の喪失が認められる場合

さきほども述べたとおり,鎖骨変形が後遺障害として認められるための条件である「鎖骨に著しい変形を残すもの」とは,裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のものであることを意味します。

この点,交通事故被害者の職業が,モデル等の容姿が仕事の有無や内容にとって非常に重要となる種類のものである場合には,裸体になったときに明らかにわかる程度の変形が鎖骨に残ったこと自体によって,労働能力の喪失が認められると考えられています。

また,このような場合,仕事への影響の大きさによっては,労働能力喪失率表における労働能力喪失率(14/100)を超える労働能力喪失率が認められる場合もあり得ます。

ウ 鎖骨変形を原因とする肩の機能障害が残った場合

(ア)肩関節の機能障害について後遺障害認定がなされた場合

肩関節の機能障害については,後遺障害等級表において,下表のとおりの後遺障害等級が用意されています。

後遺障害等級 後遺障害の内容 労働能力喪失率表の数値
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 45/100
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 27/100
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 27/100

鎖骨の変形を原因とする肩関節の機能障害が,これらの基準を充たす場合は,両者を併合して後遺障害等級認定がなされることになります。

(イ)肩関節の機能障害について後遺障害認定がなされなかった場合

肩関節の機能障害を理由とする後遺障害は,上記のとおり,最も軽いものが12級6号となりますが,12級6号が認定されるためには,「肩関節の機能に障害を残すもの」という基準を充たす必要があります。

そして,「肩関節の機能に障害を残すもの」といえるためには,肩関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されていることが必要です。

そのため,鎖骨の変形を原因として肩関節に機能障害が残ったが,その程度が12級6号に該当するまでには至らならなかったという場合も生じ得ます。

もっとも,肩関節の機能障害の程度が後遺障害の認定基準には達しないものであったとしても,例えば,肉体労働の側面が強い職種の場合は,肩関節の機能障害による労働能力への影響は避けがたいでしょう。

裁判例においても,鎖骨の変形を原因とする肩関節に機能障害が残ったが,その程度が後遺障害の認定基準には達しないというケースにおいて,交通事故被害者の職種・業務内容を考慮し,労働能力の喪失を認めたものが存在します。

この場合の労働能力喪失率の割合としては,労働能力喪失率表に記載のある12級の標準喪失率14%を認めた裁判例もあれば,それよりも若干低めの労働能力喪失率を認めた裁判例もあるところです。

エ 鎖骨変形を原因とする痛みが残存している場合

(ア)労働能力の喪失の有無と程度

痛みが残存していると,仕事の効率や労働への意欲に影響が生じることは,一般的に認められているところです。

そのため,鎖骨が変形したことが原因で痛みが残ってしまった場合については,これまでに述べた,鎖骨に変形が残ったこと自体によって労働能力の喪失が認められる場合(イ)や,鎖骨変形を原因とする肩の機能障害が残った場合(ウ)とは異なり,交通事故被害者の職種にかかわらず,一定の範囲で労働能力の喪失が認められる傾向にあります。

労働能力喪失率の割合としては,肩の機能障害が残った場合と同様に,労働能力喪失率表に記載のある12級の標準喪失率14%を認めた裁判例もあれば,それよりも低めの労働能力喪失率を認めた裁判例もあります。

(イ)労働能力喪失期間

鎖骨変形を原因とする痛みが残存している場合については,67歳までの労働能力喪失期間を認めた裁判例もありますが,一定の期間に限定して労働能力喪失期間を認めた裁判例も存在します。

労働能力喪失期間を限定した裁判例は,痛みは一般的に時間の経過により緩和することが期待できると考えられていることを考慮したものであると考えられます。

もっとも,このような考え方に対しては,痛みの原因が鎖骨変形という器質的な障害にあるのであるから,労働能力喪失期間を限定することには慎重であるべきだという意見もあります。

2 鎖骨骨折の後遺障害に関してお困りの方は弁護士にご相談を

以上のとおり,鎖骨骨折の後遺障害については,様々な論点がございます。

交通事故に遭い鎖骨に後遺障害が残ってしまった場合の損害賠償について詳しく知りたいという方は,一度,交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。

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