症状固定の適切な時期
1 症状固定とは
医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待しえない状態で、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態のことを指します。
したがって、治療によっても症状の内容・程度に変化が見られない場合や、症状の程度が一時的に良くなっても、また戻ってしまうような一進一退の場合も症状固定時期に至ったと考えられます。
2 症状固定時期の重要性
- ⑴ 治療費との関係
症状固定日以降の治療費は、原則として、賠償に含まれません。
その後も症状が継続して医療機関に通院する場合には、健康保険を利用するなど自費となってしまいます。
- ⑵ 傷害慰謝料との関係
傷害慰謝料は、事故発生日から症状固定日までの通院期間における精神的苦痛に対する金銭的補償です。
したがって、症状固定以降の精神的苦痛は傷害慰謝料としては補償されません。
- ⑶ 後遺障害との関係
症状固定時に残った症状が後遺障害の審査対象となります。
また、後遺障害の内容によっては、事故発生から症状固定までの通院期間の長さも認定上重視されることがあります。
したがって、症状固定が適切な時期であることは、適切な等級認定を獲得するための前提であるといえます。
3 症状固定は誰が決めるのか
症状固定の判断は医師が行います。
これは、医学的観点から、治療の継続の必要性を検討するものであるため、専門家である医師の判断が必要となります。
もっとも、症状固定時期が争いになり、訴訟に至った場合には、裁判官が症状固定時期について判断を下すことになります。
その場合でも、基本的には医師の見解が尊重される傾向にあります。
4 症状固定時期と治療対応の打ち切り
保険会社は、「他覚所見のないむち打ち症は一般的に3か月で症状固定」などとして一方的に治療費対応を打ち切ってくることがあります。
しかし、保険会社は医師ではないし、また、むち打ちの症状の内容・程度はそれぞれ異なるため、症状固定時期も一義的に決められるものではありません。
仮に、医師が治療継続の必要性を認めているにもかかわらず、保険会社が一方的に治療費対応を打ち切った場合には、治療を中断するのではなく、健康保険等を利用するなどして、交通事故の治療のため通院を継続すべきです。
5 症状固定時期が適切に判断されるためにすべきこと
大切なのは、医師と良好な関係を築いておくことです。
整形外科への通院頻度が少ない場合には、医師が治療継続の必要性を判断できないと回答することがあります。
したがって、医師が治療内容や症状をしっかり把握できるよう、整形外科にしっかり通院するようにしましょう。
また、整形外科に通院していても、症状が残っているのに「おかげ様で良くなりました」などと社交辞令で身体状態を伝えてしまう方もいますが、これは、医師に誤解を与えるだけで、不利益にしかなりません。
医師から治療継続の必要性についての適切な判断を得られなくなるので、普段の診察時から注意しましょう。