味覚障害による逸失利益
1 味覚障害で逸失利益は認められるのか
交通事故によって、食べ物の味が感じられなくなるという後遺症が生じることがあります。
このような後遺症が「味覚脱失」に該当するときには12級相当、「味覚減退」に該当するときには14級相当の後遺障害が認定されます。
自賠責保険の基準によれば、12級の場合は14%、14級の場合は5%の労働能力が喪失するとされています。
しかし、味覚を使う仕事に就いている人は多くはないため、味覚脱失、味覚減退で後遺障害が認定されたとしても、実際には仕事に影響がない場合が多いです。
そのため、実務上、相手方保険会社からは、味覚脱失、味覚減退の場合には逸失利益を認めないと言われることが多いです。
2 裁判例の傾向
裁判例では、性別、年齢、減収の程度および嗅覚・味覚障害の職業に対する具体的影響などの事情を考慮し、特に職業への影響を重視して判断される傾向にあります(交通事故による損害賠償の諸問題Ⅲ349頁)。
例えば、交通事故によって味覚減退等の後遺障害が残った寿司職人が、塩味の感覚に問題が出て、薄味の加減ができなったという事案において、労働能力に与える影響は重大として逸失利益を認定した裁判例があります(東京地判平成6年12月17日【交民27巻6号1892頁】)。
これに対し、哲学教師を志望する被害者が嗅覚脱失の後遺障害を負った事案について、哲学の教師としての活動に嗅覚脱失が具体的な影響を及ぼすものとは認定できないとして、逸失利益を否定した裁判例もあります(東京地判平成11年5月25日【交民32巻3号804頁】)。
また、裁判例の中には、味覚の減退が労働能力に影響を及ぼすとは認められないけれども、不自由があるとして慰謝料増額の斟酌要素としたものもあります(大阪地判平成9年8月28日【交民30巻4号1215頁】)。
3 逸失利益を獲得するために大切なこと
味覚の減退、逸脱による逸失利益を獲得するためには、障害によって仕事にどのような影響が出たのか、具体的に主張・立証することが大切です。
また、味覚障害は慰謝料の増額事由にもなり得るため、日常生活にどのような不自由が生じているのか、具体的に主張・立証することも大切です。
まずは、弁護士にご相談ください。