自覚症状のみでも後遺障害は認定されるか
1 はじめに
後遺障害の認定にあたり、対象となる後遺障害の種類・症状と、これに対応した後遺障害の等級や労働能力喪失率が定められています。
そして、そのほとんどが「外貌に醜状を残すもの」「脊柱に変形を残すもの」などのように、後遺障害の有無が画像などにより客観的に判断できるものとされています。
しかし、後遺障害の中には「局部に神経症状を残すもの」と「局部に頑固な神経症状を残すもの」の2つがあり、これらは、痛みやしびれなどの感覚の異常を理由とする後遺障害です。
感覚の異常は、画像としては現れないため、神経症状に関する後遺障害が、自覚症状のみで認定される後遺障害ということができます。
2 「局部に神経症状を残すもの」と「局部に頑固な神経症状を残すもの」の違い
両者の違いは、骨折面の不整合を原因とする痛みなど、感覚異常の原因が検査結果として明らかにされているものが「局部に頑固な神経症状を残すもの」となり、これ以外のものが「局部に神経症状を残すもの」ということになります。
このため、後遺障害の中で、「局部に神経症状を残すもの」のみが、自覚症状のみによる認定のが可能性がある後遺障害ということになります。
3 「局部に神経症状を残すもの」の認定要件
この後遺障害の対象として一般的に挙げられるのが、頸椎捻挫や腰椎捻挫受傷後に治療を継続したにもかかわらず、痛みが残った場合です。
また、「捻挫」との診断は、患者は痛みを訴えるものの、骨折などの痛みの原因となる異常が画像からは明らかにならない場合の診断です。(骨折があれば、捻挫ではなく骨折と診断されます。)。
しかし、実際の認定は、単に自覚症状の有無を確認するだけではなく、治療経過(治療を継続したにもかかわらず痛みが残存しているといえるような経過になっているかどうか)、事故の状況(車両の損傷状況などを手がかりに、身体に一定の外力が加わったといえるかどうかなど)を総合的に考慮して行われます。
このため、「自覚症状のみでの認定」自体はないと考えて差し支えありません。
4 おわりに
後遺障害の認定に当たっては、いろいろな問題が生じることがありますので、、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。