RSD(CRPSタイプ1)の後遺障害について
1 CRPSとは?
CRPSとは,Complex Regional Pain Syndrome略称であり,日本語では,一般的に「複合性局所疼痛症候群」と呼ばれます。
CRPSには,主要な末梢神経の損傷がないタイプ1(RSD)と神経損傷のあるタイプ2(カウザルギー)があります。
2 RSD(CRPSタイプ1)とは?
RSDとは,Reflex Sympathetic Dystrophy(反射性交感神経性ジストロフィー)の略称であり,異常な交感神経反射を基盤とする四肢の疼痛疾患を総称する概念です。
RSDの特徴的な症状としては,例えば以下のようなものが挙げられます。
①灼熱痛(焼かれるような痛みのことを言います。)
②感覚過敏・感覚低下
③皮膚変化(色の変化,皮膚委縮,皮膚温低下,乾燥等)
④骨委縮
3 CRPSの判定指標
CRPSの症状は多様であるところ,日本では,厚生労働省CRPS研究班によって,独自のCRPS判定指標が開発されていますので,以下にご紹介します(以下の判定指標は,臨床用のものです。)。
A 病期のいずれかの時期に,以下の自覚症状のうち2項目以上該当すること。
ただし,それぞれの項目内のいずれかの症状を満たせばよい。
- 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 2.関節可動域制限
- 3.持続性ないしは不釣合いな痛み,しびれたような針で刺すような痛み(患者が自発的に述べる),知覚過敏
- 4.発汗の亢進ないしは低下
- 5.浮腫
B 診察時において,以下の他覚所見の項目を2項目以上該当すること。
- 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 2.関節可動域制限
- 3.アロディニア(触刺激ないしは熱刺激による)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
- 4.発汗の亢進ないしは低下
- 5.浮腫
なお,この判定指標については,但し書きにて,「外傷歴がある患者の遷延する症状がCRPSによるものであるかを判断する状況(補償や訴訟など)で使用すべきではない。」とされています。
4 RSD(CRPSタイプ1)の後遺障害認定基準
自賠責保険におけるRSD(CRPSタイプ1)の後遺障害認定基準については,以下のとおりです。
まず,①関節拘縮,②骨の委縮,③皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の委縮)という慢性期の主要な3つの症状のいずれもが健側と比較して明らかに認められることが必要です。
その上で,疼痛の部位,性状,疼痛発作の頻度,疼痛の強度と持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見などにより,疼痛の労働能力に及ぼす影響が判断され,その程度に応じて,下表のように等級認定がなされます。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
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第7級4号 | 軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの |
第9級10号 | 通常の労務に服することはできるが,疼痛により時には労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
第12級13号 | 通常の労務に服することはできるが,時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの |