下肢の醜状障害
症状例:下肢に傷跡が残った
外貌醜状は,次の表のとおり,7級12号から14級5号までの等級が認められます。
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
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9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
「外貌」とは,頭部,顔面部,頚部のように,両手両足以外の日常露出する部分をいいます。
「てのひら大」には,指の部分は含みません。
「露出面」とは,上肢については上腕(肩関節以下)から指先まで,下肢については大腿(股関節以下)から足の背までをいいます。
「著しい醜状を残すもの」には,次のものが当たります。
- 頭部にてのひら大以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損があり,人目につく程度以上のもの
- 顔面部に鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没があり,人目につく程度以上のもの
- 頸部にてのひら大以上の瘢痕があり,人目につく程度以上のもの
「相当程度の醜状」には,次のものが当たります。
- 顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で,人目につく程度以上のもの
「醜状」には,次のものが当たります。
- 頭部に鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損があり,人目につく程度以上のもの
- 顔面部に10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3㎝以上の線状痕があり,人目につく程度以上のもの
- 頸部に鶏卵大面以上の瘢痕があり,人目につく程度以上のもの
なお,2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接する又は相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合もあります。
その場合,それらの免責,長さ等を合算して等級を認定します。
手足の露出面の醜状障害については,露出面の2分の1程度以上に醜状を残すものは,12級が認定されます。
顔面神経麻痺と口のゆがみ
顔面神経麻痺により,口のゆがみが生じることがあります。
これは,単なる醜状として扱われます。
頭蓋骨の欠損と神経症状
頭蓋骨のてのひら大以上の欠損により,頭部の陥没が認められる場合があります。
そして,その陥没により脳が圧迫され,神経症状も併せて生じる場合があります。
その場合の等級は,外貌の醜状障害により認められる等級と神経障害により認められる等級のいずれか上位の等級が認定されます。
まぶた,耳介,鼻の欠損障害と醜状障害
まぶた,耳介,鼻が欠けた場合,これらの欠損障害だけでなく,醜状障害が認められることもあります。
この場合,これらの欠損障害について定められている等級と外貌の醜状により認められる等級のうち,いずれか上位の等級が認定されます。
耳介については,耳介軟骨部の2分の1以上を欠損した場合は,「著しい醜状」となり,その一部を欠損した場合は,単なる「醜状」となります。
鼻については,鼻軟骨部の全部又は大部分を欠損した場合は,「著しい醜状」となり,その一部又は鼻翼を欠損した場合は,単なる「醜状」となります。
火傷治癒後の黒褐色または色素脱失による白斑痕等
火傷が治った後に,黒褐色に変色したり,色素脱失によって白斑痕が残ったりすることがあります。
これは,永久的に残ると認められ,かつ,人目につく程度以上のものであれば,「醜状」として,等級認定される可能性があります。
ただし,等級認定を受けるためには,次のいずれかに当たらなければなりません。
- 頭部の鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損である
- 顔面部の10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3㎝以上の線状痕である
- 頸部の鶏卵大面以上の瘢痕である
日常露出しない部位の醜状障害
「日常露出しない部位」とは,胸腹部,背部・臀部をいいます。
胸部及び腹部,又は背部及び臀部の全面積の2分の1以上の範囲に瘢痕を残すものは12級が認定されます。
胸部及び腹部,又は背部及び臀部の全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すものは14級が認定されます。
下肢の醜状障害
1 醜状障害とは
交通事故による後遺障害には様々なものがありますが,その中に「醜状障害」と呼ばれるものがあります。
醜状障害とは,簡単に言うと,体の表面に傷痕やあざが残ってしまった状態のことです。
体の表面にある傷痕やあざは,体の動きを制限したり,痛みやしびれを生じさせたりすることはありませんが,その大きさや形状によっては,人目につきやすいために周囲の目が気になり,精神的な負担を負うことになります。
また,特に目立つ醜状痕の場合は,仕事や日常生活に影響を及ぼす可能性もあります。
2 醜状痕と後遺障害
醜状痕が認められる部位は,主に外貌,つまり顔面ですが,それ以外の部位であっても,醜状障害として後遺障害が認められます。
たとえば,下肢に手のひら大の醜状痕が残った場合,14級5号の後遺障害が認定されます。
さらに,手のひらの3倍程度以上を超える瘢痕であれば,特に著しい醜状と判断され,12級相当の認定を受けることもあります。
ちなみに手のひら大というのは,指の部分を除いた面積のことで,事故被害者本人の手のひらの大きさで計測します。
醜状痕についての後遺障害診断書を作成する場合,残存する醜状痕の形状・大きさ・長さ等を確認して,きちんと記載してもらう必要があります。
また,受傷状況及び症状経過と,残存する醜状痕との整合性が取れているかという点も注意しなければなりません。
後遺障害診断書が完成し,申請を行うと,事故の調査機関である損害調査事務所の担当者と面接をすることになります。
面接により,残存する醜状痕の形状や大きさについて,担当者が直接確認します。
醜状痕の後遺障害にはこのような特徴がありますが,弁護士法人心では,事故被害者が,それぞれの損害に合った適切な補償が受けられるよう,後遺障害等級認定を前提としてサポートをしています。
交通事故被害に遭い,どうやって対応していけばいいかわからず不安な方,後遺障害の申請をお考えの方,弁護士法人心にご相談ください。