嗅覚脱失
症状例:匂いが分からない
鼻の後遺障害は,等級認定表には,欠損のみが定められています。
しかし,実際には,鼻の後遺障害は,欠損に加えて,機能障害としての嗅覚の脱失,減退についても認められます。
嗅覚の脱失については,12級相当が,減退については,14級相当が認められます。
嗅覚の脱失又は減退
嗅覚脱失又は鼻呼吸困難がある場合は,12級相当となります。
嗅覚の減退のみの場合には,14級相当となります。
嗅覚の脱失又は減退については,T&Tオルファクトメーターによって検査されます。
基準,嗅力検査の認知域の平均嗅力損失値により,5.6以上の場合は嗅覚脱失が,2.6以上5.5以下の場合には嗅覚減退が認められます。
嗅覚脱失については,アリナミン静脈注射による静脈性嗅覚検査による検査所見のみによって確認することもできます。
臭いに関する後遺障害
1 交通事故による嗅覚脱失・嗅覚減退
交通事故による身体的被害については,一般的に,骨折や大きな擦過傷等を伴う分かりやすい外傷がイメージされやすいと思われます。
もちろん,このような一見して分かりやすい交通事故外傷の事案もありますが,例えば,交通事故後に,臭いをかぎわける能力が衰えてしまうといった,一見すると目には見えず,分かりにくい傷害を交通事故によって負うこともあります。
このような,臭いをかぎわける能力が衰えてしまう症状を,専門的には「嗅覚脱失又は嗅覚減退」と呼びます。
人間のなかで,嗅覚をつかさどる感覚器官は,鼻ですが,嗅覚の脱失や減退は,必ずしも交通事故で鼻を怪我した人だけがなるわけではありません。
むしろ,鼻ではなく,交通事故により頭部に大きな衝撃をうけて,脳挫傷や脳出血等の外傷性脳損傷を受けた方が発症するケースが多いです。
特に,前頭葉周辺に脳損傷が起きた場合には,嗅覚に障害が起きやすいといわれています。
嗅覚も含める全ての感覚は,最終的に脳で情報が処理されますので,脳に損傷を負った場合,たとえ鼻などの感覚器官に異常がなかったとしても,嗅覚の脱失や減退が生じることがあるのです。
2 嗅覚に関する検査と後遺障害
交通事故により嗅覚の脱失が生じた場合,専門的な検査(T&Tオルファクトメータ検査やアリナミンPテスト等)を受けて一定の水準を超えた場合には,後遺障害の認定が受けられる可能性がございます。
具体的には,T&Tオルファクトメータ検査で5.6以上の数値となった場合には,嗅覚の脱失と判断されて,後遺障害等級12級相当と判断されます。
また,T&Tオルファクトメータ検査で2.6以上5.5以下の数値となった場合には,嗅覚の減退と判断されて,後遺障害等級14級相当と判断されます。
このような後遺障害が認定された場合,各等級に応じて,慰謝料や逸失利益といった損害賠償の項目が追加されることが考えられます。
もっとも,嗅覚の脱失や減退により,どの程度の逸失利益が発生するのかなどは,争点となりやすいところであるため,具体的な損害賠償額等に関するお悩みは,まずは弁護士までご相談ください。